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扉の向こう
第6章 久しぶりの・・・
小綺麗で隠れ家的なイタリア料理屋の席で、香菜はネイビーのスーツの男と、ニコニコしながら、コース料理とワインを楽しんでいる。店に入った当初の二人は初めて入る店、初めて食べるコース料理に緊張気味だったが、お酒が進むにつれ会話が弾んでいく。香菜は「駅前であなたを見かけた時は衝撃だったわよ。頭は刈り上げになっているわ、スーツなんて着ちゃってるわで」この話をするのは今日何回目であろうか。この話をする度に嬉しそうな表情をする。確かに香菜はこの男性の刈り上げを見たのは初めてである。この男は長らくトレードマークだったセミロングの髪型を今日切ったばかりなのだ。しかもこの男、仕事でスーツを着る事は無い。「香菜の方こそビックリしたよ。雰囲気がグッと大人の女性になったと言えばいいのかな。良い意味で若さからの卒業って感じで」違いを明確に答えられない所が、残念ではある。「あっそうだ香菜、この前同僚から、雰囲気の良いバーがこの近くにあるって聞いたのだけど、行ってみない。」 「えーどうしようかな。行ってみたいけど、緊張しそう。」 「大丈夫だよ。俺もバーは何回かしか行った事無いけど、カクテルは好みをバーテンの人に伝えればおまかせで作ってくれるし、何だったらノンアルコールのカクテルもあるよ。俺はバーが持つあの独特な雰囲気が好きなんだけど、香菜も絶対気にいってくれると思うし、行く度に今度は香菜と二人で行きたいと思っていたんだ。ねえ行こうよ。」 香菜は少し考えると「んーわかった。きちんと私をエスコートしてくれる?」 香菜は笑顔で答える。「ありがとう、わかった。きちんとエスコートして、俺も大人の男だってものを見せてやる。」笑顔で片手にガッツポーズを作り答えた。二人の楽しい時間がどんどん積み重ねられていく。純粋に楽しんでる香菜に対し、スーツの男は邪な心を隠し持っていた。