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アイドルと恋人契約
第2章 一週間目
クローゼットの中身を引っ張り出し、平日の朝だというのに鏡の前でファッションショーをすることになってしまった。
結局いつもとほとんど変わらないシンプルなワンピースで、髪もストレートのままにした。
仕事では履かないヒールのついたパンプスで、後は仕事帰りにメイクを少し変えることにする。
前回とは雰囲気は違うかもしれないが、それなりに清楚でまとまっていると思う。

──そもそも芸能人の翔さんの前で、私なんかがいくらオシャレしてもなあ……

会社用のメイクを施しながら、みずきは鏡にうつる自分の顔を見て小さくため息をついた。
普通、どこにでもいる、目立たない、そんな言葉がよく似合うと自分でも思う。
髪は茶色で胸下までのセミロング、二重だが華やかさのない目に、目立たない鼻、ぷくりとした唇は褒められることはあるが、かわいいと他人から言われることもほとんどない。
身長も156センチと平均的で、太っても痩せてもいない。とりたてて特徴があるわけでもない、街にいたらすぐに見失ってしまうような自分。そんな自分がどうして、期間限定とはいえ翔の恋人になれたのだろう。

「山田さんが適当に声かけたのかな……それか無害そうだから、とか」

自分で言って虚しくなってしまう。
別にいいけど、と続けた唇にシアーレッドのリップを施して、化粧ポーチをカバンに入れてみずきは部屋を出た。
カツ、とヒールの音がするのがなんだか心地いい。
今日の夜は翔に会える、そう思うと胸がドキドキして、走り出してしまいそうだった。


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