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第1章 　山本均　

　品物をレジ袋に詰めながら、それを見かねた僕は一万円を取り返しつつ言う。

「先輩、いい加減にしてください」

　だけど先輩の方は、まるで聞く耳を持たない。

「アンタみたいに怪しい格好だと――そうそう、防犯上の問題ってやつ？　顔だけでも見せてもらえれば、いくらかは安心かな。ホント、ちらっとでいいからさぁ」

　僕が品物を詰めた袋をいつの間にか取り上げ、先輩は顔を近づけるとなれなれしい口調でドテモンさんに迫った。先輩からすれば、相手が弱々しそうな若い女子であるとわかり、持ち前の悪戯心に拍車がかかったのかもしれない。

　すると、その時だ。

「あっ！」

　先輩からのプレッシャーに耐えかねたように、ドテモンさんは買った品物も一万円さえそのままに、一目散に店を飛び出していった。

「ハハ……なんなんだよアイツ。やっぱ変だろ。てか変態？」

　自分のせいでこんなことになっているのに、先輩は無責任にそんなことを言ってる。

「一応、女みたいだが。アレ、絶対にドブスだろ――って、オイ？」

「ちょっとの間、店をお願いします」

　先輩にレジに任せ、慌ててドテモンさんの後を追った。