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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第3章  たもつ 


 それは返事を先送りしたようだけど、実はそうではないことを内心ではわかっていた。すなわち今の時点で、美里さんと食事に行くのは決定したのと、ほぼ同義。

 ふわふわとした今現在の気分が、なによりの証拠だ。誘われたことが、素直に嬉しかった。

 一方で気が引けるのも確かで、それは岬ちゃんの存在があるから。当たり前だけど、二人を天秤にかけるなんて、そこまで自分を見失っているつもりはなかった。

 ほんの少し前までは、女の子と話したことすらロクにありはしないのだから、卑下することはあっても、自惚れられるような要素はない。

 岬ちゃんとは二度もエッチなことをしているのに、彼女からは恋人ではないと明確に否定されてしまった。ある意味、それを仕方ないとは思いつつも……。

 僕たちの関係は普通の恋愛とは、あまりにかけ離れているから、だからこそ悩ましくもあった。

 美里さんについては美人女子大生という以外、まだなにもわかっていないのと同じ。思ったより気さくで話しやすい人だけど、その真意は謎だ。

 急にバレンタインのチョコをくれたりして、翻弄されているような印象は拭えない。あんな美人が、僕のことを本気で相手にするとは思えなかった。

 はじめから大きな期待していない分、能天気に浮かれていられるのかもしれない。どちらにせよ、僕が優柔不断であることだけは間違いがなさそうだ。

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