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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第3章  たもつ 


「いや、まさか……と、とてもいい、よ」

 もう少しましな誉め言葉は、ないものだろうか。自分の語彙力を情けなく感じるほど、今の岬ちゃんの姿を表現するには足りなすぎた。

「でも、いつもと違うのは、どうして?」

 薄くメイクをした顔。その視線を泳がせるようにして、岬ちゃんは言う。

「いつもの格好では、一緒にいてくれる均くんに、恥ずかしい思いをさせてしまいますから……」

「そんなこと、気にしなくたってよかったのに」

 そう思ってくれたことが素直に嬉しい。僕は自然と微笑を浮かべた。

「じゃあ、少し歩こうか」

 岬ちゃんは、そっと僕に左手を差し出す。

「その代わり、手を……繋いでいてください」

「え?」

「やっぱり、この姿で外を歩くのは……まだ怖くて」

 どうして、怖いのだろう。キミの過去に、なにがあったの?

「だから、手を繋ぐのが外出時のデフォルト……ということで、お願いします」

 おそるおそる差し出された手を、僕はしっかりと握った。浮かべた疑問を、とりあえず頭の片隅に追いやりながら。

「うん、大丈夫。僕がついているから」

 ちょっと頼りないかも。でも、不安にさせたりしない。そう心に誓い、岬ちゃんの手を引いて歩きはじめた。

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