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第1章 　山本均　

　か、かわいい……。

　それこそがドテモンさんの素顔を見た際の、僕が抱いた率直な第一印象だった。
　
　思わず瞬くことさえ忘れ、彼女の容姿に見惚れる。そんな瞬間の不意をつかれた。

「好き、です」

　彼女は突如として、そう告げていたのだ。

「は……？」

　突然すぎて、頭の中が真っ白になった僕が動揺したのは当然としても。自分から言っておきながら、彼女の慌てぶりも尋常ではなかった。

「やあっ……ええぇ……いきなり好きとかぁ言って……し、信じられない」

　彼女は両手を頬に当て、地面を向きながら独り言のように呟いている。

「えっと……な、なんですか……今？」

「じゃなくて、そうじゃないっていうか……ああん、もう！」

　次に彼女は、自分の頭をぽかぽかと叩き始めた。

「あの……だ、大丈夫ですか？」

　そんな問いかけに、こくんと頷くと、今度は顔をじっと見つめてきた。大きな黒い瞳の中で、街灯の光が小刻みに揺れる。