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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第4章 岬?
「……ど、どうも」
眼鏡越しに仰ぎながら、一応はそう返事をした。意外にも(わたしとしては)声がすんなり出たことに、やや驚く。
均くん以外の人と冷静に向き合うのは、いつ以来のことだろうか。
「ねえ、ひとつ聞いてもいい?」
この前置きは、以前にも聞いた覚えがあるから思わず身構えた。前の時は均くんと一緒の時に「恋人同士なの?」と聞かれている。
「こ、答えられる、ことなら……」
わたしが言うと。
「どうして、そんな風に自分の姿を隠すの?」
彼女は鼻先がくっつきそうなほど顔を近づけて、更にこんな風に囁きかけた。
「こんなに、可愛いのに」
レンズ越しに、切れ長の瞳に見据えられる。髪からか首筋からか、女らしい香りがした。女だから、すぐには拒絶しない。なのに少しだけ、妙な緊張を覚えていた。
「そっ、そんなこと、ないっ!」
わたしは慌てて数歩後ずさりをして、彼女との距離を取った。
「ふーん」
意味ありげな笑みを向けられ「この女、なんなんだ?」との疑問が浮かぶ。心の中のその想いを、まるで聞き届けたかのように。
「じゃあ一応は、言っておくかな」
「な……なに、を?」
「私ね――彼のことデートに誘っちゃったから」