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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第4章   岬? 


「オーイ、そろそろ――うわっ!」

 レジの奥から出てきた店員(いつも均くんが「先輩」と呼ぶ)が、わたしの方を見るなり大げさな声を発して顔をしかめた。

「じゃ、じゃあ」

 レジ袋を奪うようにして、結局はなにも聞けないままに店を後にする。

「はあ……」

 明るい店内から外に出ると、暗い夜道を前にため息をこぼす。いつもは光の差す場所こそが怖いくせに、今夜は闇の中を一人で歩くことがとても憂鬱だと感じていた。

 わたしは均くんと、一体どうなりたいのだろう?

 自分の気持ちがわからずに、暗闇と同じような自分の心の中に問いかけてみるが、一切響くことなく、どろどろの黒にまみれていった。

 そうだ。そもそも、わたしがどうしたい、というのは捨てたはず。そんな風に思う資格は、はじめからないのだ。

 だからせめて〝岬の名〟を慰めてもらおうとしてる。それが、なんの罪滅ぼしにもならないことも、わかっているけど……。

「岬ちゃん」

「ひいっ!」

 突然、背後から呼ばれ、声を上げて驚いた。激しく脈打つ心臓を押さえながら、ゆっくりと後ろを振り向くと。

「た、均くん……?」

「驚かせて、ごめん」

 最初に話した時と同じ、細い路地のところの弱い街灯の下。あの時と同じように追ってきてくれたことに、さっきとは違う心音の高鳴りを覚えてしまう。

「岬ちゃんに、聞きたいことがあるんだけど、いい?」

 なんだろうと思いながら、無言で頷いた。

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