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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第5章 均
「おーい、こんな場所で寝てんじゃねーよ」
レジ越しに、頭をこつんと叩かれた。
「じゃあ、奥にいって寝てきていーすか?」
頭を上げ先輩を恨めしそうに見ると、いつもは決して言わないようなことを平気で口にしていた。そらくらい参っている。
「ふざけんな、バーカ。真面目だけが取り柄のお前が、不真面目な俺の真似をしてどーすんだよ」
一応、自覚はあったんすね……。
「僕だって別に、真面目なつもりなんてありませんよ。いつも先輩がサボってるんだから、今日くらいいいでしょう?」
「チッ! なんだよ。やけにつっかかるじゃねーか、ああ? なんか、気に入らねーことでもあったのか?」
そんな風に聞かれ、僕はふっと自嘲気味な笑みをこぼす。そして不思議そうにこちらを眺めている先輩の前で、投げやりに言うのだ。
「僕の人生に気に入ることなんて、ひとっつもありませんから」
「はあ?」
先輩が思いっ切り、顔を歪めた時だった。店の入店音が、彼女の来店を告げた。
その姿に、真っ先に反応したのは先輩の方だった。
「美里さん!」
「ああ、うん。どうもね」
入口の付近で先輩に迎えられた美里さんは、僕の方に困ったような視線を一瞬だけ送ってから、その後は店の奥に行きながら先輩との会話に応じていた。