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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第5章 均
◆ ◆
前日、美里さんがコンビニを訪れたのは、午前二時過ぎだった。
僕が「いらっしゃませ」と自然な笑顔を作ると、美里さんも「ウフフ、どうもぉ」と親し気な微笑を浮かべた。
こんな時間に訪れる時は、いつも微かにアルコールの香りを漂わせていたけど、この時に限ってはもっと明確に酔っていたようであり。言葉尻もどこか甘く、目つきも幾分とろんとしていた。
雑誌の棚で商品を陳列していた僕に近づく足取りも、かなりおぼつかない。左右にふらふらとしながら、傍らまで辿り着くと。
「――!」
崩したバランスを立て直すように、僕が差し出した右腕に掴まっていた。
「だ、大丈夫ですか?」
僕を支えとしたまま、すぐ傍で項垂れる彼女に聞くけど。
「うーん……どうだろ。大丈夫じゃなかったら、どうにかしてくれる?」
顔を上げた美里さんの悪戯っぽい笑みに、僕の胸はどきりと脈打つのだ。
「ちょ、ちょっと。困りますから……」
「どーして?」
他に客の姿もなく、先輩はいつも通り店の奥でサボってるとはいえ、こんなにも至近距離で互いの顔を見つめ合う状況が、少なくとも勤務中の僕にとって適切であるはずもなく。
酔っているとはいっても、あからさまに誘惑を受けているような感覚があるのは、なにも気のせいではないだろう。
少し前からメッセージを送り合ったり、食事に誘われてはいたのだけど、いまだに美里さんの行動や言動に、僕は戸惑うばかりだ。