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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第5章   均  


 そうはいってみても、胸の高鳴りは誤魔化しようもない。

 僕の方に半身をぴったりと寄せた時に、肘の辺りが胸の柔らかさの間に挟まれていることを意識しないでいることなんてできないのだ。

「ねえ、キミはなんで困ってるの?」

「そ、それは……」

 答えられずに狼狽えた時に、店内に鳴り響いた入店音にぎくりとした。

「いっ、いらっしゃいませぇ!」

 思わず裏返った声を出しながら、僕は咄嗟に美里さんから離れ足早にレジに向かった。

 入店した三十代くらいの男性が直接レジに向かったことから、おそらくタバコを買いにきたとだと判断したからだ。すると、予想通り。

「マルボロ・メンソールをこれだけ」

 僕がレジに入るなり、その男性客は片手を広げ五本の指で買い求める数量を示していた。

「かしこまりました。少々、お待ちください」

 僕はそう答え、レジの背後に陳列されたタバコの中から注文の銘柄を取り出す。そうしながらも、視線はちらりと雑誌コーナーの方へ。

 美里さんは一人で立ち尽くし、雑誌棚を眺めているよう。髪に隠れて表情まではわからないけど、少なくとも床にへたり込むほど泥酔してるわけではないようだ。

「ん?」

 タバコの会計を待つ男性客が何気に、僕の視線を追う。背後を振り向くと美里さんの存在に気づき、薄っすらと笑った。

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