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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第5章 均
男が店から消えるのを、しっかりと確認した後で、僕はほっと胸を撫で下ろした。
傍らの美里さんに「大丈夫ですか?」と訪ねようとした刹那、腕にしがみつかれて慌てる。
「み、美里さん?」
「ご、ごめんなさい……」
「いえっ、いいんですけど」
テンパって答えながら、美里さんの様子を見た。
大人っぽくてカッコいい美人女子大生といった雰囲気とは、今は無縁。僕にぴたりと身を寄せたまま、その身体を小刻みに震わせている。
暫くそうしたまま動かなかったけど、不意に顔を上げると僕の顔を見つめて、こんな風に言った。
「わ、わたしね。男の人が……ううん、あんな感じの男の人が、とても苦手で……怖かった」
口元に微かに笑みを浮かべるが、無理をしているのか唇が震える。僕に向けた眼差しも、少し潤ませていた。
明らかに普段の美里さんではない。酔った上にトラブルに遭遇したにせよ、こんな弱々しい姿は想像もしたことがなかった。どうしてしまったのかと、心配にもなる。
とはいえ店の中で仮にもお客と、いつまでもこうして身体を寄せ合っているわけにもいかない。僕は天井の片隅にある防犯カメラを気にした。
裏でサボっている先輩がこの映像を見ていたら、すぐに駆けつけてきて頭を小突かれるくらいじゃ済まないだろう。でも、そうなってないということは、どうも熟睡しているようだ。
先輩はともかく、後で店長に確認されたら面倒である。