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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第1章 山本均
「ちょっと、返してください!」
「まあまあ、いいからいいから」
先輩は長机を回り込むと距離を取って、僕のスマホを眺めている。
「ほほぉ、山本くん。生意気にも彼女ができたのかい」
「いやっ……彼女ってわけじゃ」
「どこで知り合ったんだよ?」
「ど、どこって……」
僕が言葉に詰まると、先輩は厳しい眼光を向け、更にこう迫ってきた。
「だってお前さぁ。バイトの時以外、ほとんど家にこもってるって言ってたじゃん。そんな奴が、どうやって女の子と知り合うわけ。ははあ、ネットか?」
「ち、違いますよ」
「じゃあ、どこだよ?」
「それは……」
どこで? という質問に正直に答えるのなら、それは僕たちが働くコンビニの店内ということになる。そして、その相手は先輩の言うところの「ドテモン」なのだ。
当の先輩の意地悪がきっかけで、僕は彼女を追いかけ店の外へ走った。あの後も連絡先の交換以外に、ほんの少しだけ互いのことを語り合っている。
彼女はこの近くのアパートで一人暮らしをしているとのことだけど、外出するのは数日に一度のコンビニへの買い出しだけだという。あまり追及はしなかったけれど、その話から察するにどうやら部屋で引きこもっているようだ。
コンビニにやってくるあの姿と様子をみれば、人と接するのを極端に嫌っている(あるいは怖がっている)のは間違いない。きっと、なにか深い事情があるのだろう。名前をはっきりしないのも、無関係ではないように思えた。
僕だって最低限、深夜にバイトをする以外、昼は家で寝てるかネットをしてるか、とそんな感じ。彼女のことを、とやかく言える立場ではなかった。