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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第5章   均  


 玄関に灯った、弱い間接照明を頼りにすると――。

 抱き合い、服を剥し合い、唇を重ね合い、見知らぬ間取りを辿り、また抱き合い、せめぎ合って、コートやらシャツやらニットやら、二人の衣服を床に置き去りにしながら――。

 どすんと、ソファーらしき弾力の中に、背中から押し倒されていた。

「ごめんね。乱暴で」

「いえ」

「言い訳に聞こえるかもしれないけど、いつもはこんなじゃないの」

「わかってますよ」

 と、答えながらも、心臓は飛び出しそうに自らの存在をアピールする。

 美里さんの言う〝いつも〟の相手とは誰だろうと、無意味なことが心理として過ぎる。きっと僕が叶おうとするのさえおこがましいのだと、その架空の相手と張り合うのを、まずはあきらめてから。

 それでも今この時に、美里さんが必要としているのは僕なのだ、と思い返してやる。

 暗闇の中で僕の上に馬乗りになった美里さんが、怪しくカットソーを両腕でたくし上げると、その拍子に持ち上げられた胸が服を首から抜いたのと同時に、ぷるんと弾けたように揺れた。

 年上の美女の艶めかしい姿を見上げ、僕の中にマグマのような衝動がふつふつと滾った。

「山本くんは、はじめて?」

 唐突に聞かれ、少し間を置いてから――

「……そうです」

 と、答えた。

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