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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第1章  山本均 


 その後、深夜のバイトに勤しむ僕の気分や顔色が、思いっ切りブルーだったのは言うまでもないだろう。

 勤務中のスマホの所持は厳禁である。ミーティング前に店長から注意を受け、やむを得ずロッカーの中にしまっていた。

 つまり例のメッセージを取り消しできないまま、もう数時間が経過しているということ。搬入後の品出しに区切りがついた時、横で作業してる先輩の方をちらりと見た。

「なんだよ」

 と、聞かれ。

「すみません……今日は、先に休憩してもいいですか?」

 既読になったのは、もうどうしようもない。今は、とにかく一刻でも早くフォローのためのメッセージを送るべきだ。僕は焦っていた。

 たとえば【さっきはゴメン。バイトの先輩の悪ふざけだから気にしないで】とか【ほんのジョークだから忘れてね】とか、どんなメッセージを打つべきか、さっきから頭の中はそればかりだ。

「なにサボろうとしてんだよ。まだ、そんな時間じゃねーだろ」

「……」

 いつも僕に仕事を押しつけてゆっくりサボるくせして、この人はどうしてそんなセリフを臆面もなく言えるのだろう。大体、僕がこんなにも気をもんでいるのは、あなたの悪ふざけのせいなのに……。

 今日に限って真面目に作業する先輩の姿を、僕は恨めしそうに見つめた。すると、そんな時のことだ。

「いらっしゃいませ」

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