この作品は18歳未満閲覧禁止です
![](/image/skin/separater2.gif)
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第1章 山本均
![](/image/mobi/1px_nocolor.gif)
「ほら、お前の担当の客だぞ」
おそらくは、美里さんとのやり取りを面白くなく見ていただろう先輩から、強く胸を突かれた。その拍子に、美里さんに握られていた右手も放れる。
「い、いらっしゃいませ……」
僕はなんとも微妙な心境のまま声をかけると、岬ちゃんとすれ違うようにしてレジに入った。
「……」
一方で岬ちゃんが、いつものように品物の物色を始めると、その様子を先輩と美里さんが訝し気に眺めていた。
先輩の方はともかく〝ドテモン〟初見の美里さんにしてみれば、その姿に驚くのも無理はない。女性としてあまりにも対照的な二人が、同じ空間に存在することが、少しだけ不思議に思えた。
でも皆はしらない。岬ちゃんの素顔のかわいらしさをしるのは、僕だけだから。
「ちっ……」
岬ちゃんが雑誌を眺めながら進むと、その前に立つ先輩が舌打ちをしながら仕方なく通路を開ける。仮にもお客に対して取る態度ではないが、そんな先輩も彼女の素顔をしったら、少なくとも同じ態度にはならないだろう。
そう無責任にも、先輩はしらない。あんなメッセージを送っておきながら、その相手が今まさに目の前にいるってことを……。
そんなことを漠然と考えていた時、レジで待機しながら僕は一気に緊張を高める。そうなのだ。美里さんに手を握られたところを見られたかも、なんて、その程度のことを気にしている場合じゃない。
![](/image/skin/separater2.gif)
![](/image/skin/separater2.gif)