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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第1章  山本均 


【エッチなことはいつさせてくれるの?】


 その頭の悪すぎるメッセージを思い出し、思わずめまいがした。誤解が解かれていない以上、彼女は僕が送ったものと思っているはず。

 いきなりあんなメッセージを目にして、どう感じただろうか。事情はまだしらないけれど、人との接触を極力避けて引きこもりをしているような子だ。

 きっとその心は、とてもデリケートに違いない。軽蔑されるのは当然としても、もし傷つけていたとしたら……。

 一刻も早く、弁解をしたい。だけど、そう焦る僕のいるレジに先に足を運んできたのは、さっき知り合ったばかりの美人女子大生、美里さんの方だった。

「お願いね」

「あ、はい」

 レジに置かれた缶コーヒーの会計は、電子マネー決済で素早く終わった。

「じゃあ、また」

「また?」

「家が近所だから、これからはちょくちょく顔を出すつもり。迷惑?」

「いえ、まさか。でも、どうして僕にそんなことを?」

「うーん……なんかね。一目で君のこと、気にいっちゃったみたいなんだ」

 美里さんは少し照れたようにして、まるで他人事みたいに言った。

 しかし美女の甘い言葉に一切の耐性を持たない僕は、それを本心とは受け取ることができない。

「か、からかっているのなら――」

「違うよ」

 美里さんはきっぱりと言って「じゃあね」と手を振って店を後にした。

 それに対し「あ、ありがとうございました」と頭を下げた後で笑みを作ったのは、なにも営業スマイルというわけではない。

 あんな美人と顔見知りになれたことを、幸運と思わないはずもなく。とはいえ、今この時に浮かれてしまうのは、あまりに呑気すぎた。

 レジの前には、既に次のお客が待っている……。

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