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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第8章 あやか
だけど事務所を出る時「ちょっと、待って」と、またわたし一人が呼び止められた。
先に行ってしまおうとする二人を気にしながら、わたしは加賀見さんを睨みつけた。
「どうして、わたしにばっかり言うんですか?」
「簡単だよ。キミにダントツで可能性を感じたから。他の二人には、まず無理だね」
「じゃあ、どうしてスカウトしたんです」
「街中をちょっと歩いたくらいじゃ、コレだと思える子はなかなか見つからなくてさ。それでも名刺を配っておくと、たまにキミのような子を連れてきてくれることがある」
「そんな、撒き餌みたいなこと……」
「ハハハ、いみじくもその通りさ。この世界では昔から、オーディションの付き添いできた方がスターに、なんて話がよくあるんだけど。実際に、自己顕示欲が強すぎない方が成功する傾向にあると思う。ま、俺個人の好みの問題でもあるが」
「わたし、やりませんよ」
「どうして?」
「興味がありません」
「ホントに?」
そう言って向けた目は、わたしの内面を見透かしていたような気がした。
そう、興味がなければ、ここまできてない。
「しつこくするような真似はしない。だから、連絡だけ取れるようにしてくれないか」
「……」
その時点では、まだ雲を掴むような話だった。