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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第8章 あやか
週末が明けて月曜日。教室に入ったわたしは、二人に駆け寄ると努めて明るく言った。
「もう、おいてかないでよぉ! せっかくだから買い物でも行こうって話してたじゃん」
事務所を訪れたあの後、二人はすぐに電車で地元に戻っていたという。だいぶ後にメッセージが届くまで、わたしは周囲を探して歩いていた。
わたしに対して怒っているのは、当然わかっていたけど。
「別に、気が変わっただけ」
そう言ったのはスカウトされた子で、ぷいっと顔を背けると、わたしから離れてしまう。その後を追う前に、もう一人が耳打ちするように言った。
「彩佳、ちゃんと謝りなって。私が声をかけられたのにって、ずっと文句言ってたんだから」
それだけ伝えると、そそくさとその子もわたしの傍からいなくなった。
その時はわたしだって意固地になっていたから、別に自分が悪いわけじゃないし謝ったら逆に嫌味じゃない、とか思ってそれ以上は取り繕うことをしなかった。
どうせモデルなんてできるわけないのだから、ほとぼりが冷めれば友達とも元通りになれると簡単に考えていたのだ。すぐに平謝りすれば、そんなことにはならなかったかもしれない。
お互いに多感な時期というせいもあったのだろう。結局それを機に、わたしはクラスで一番仲が良かった二人の友達を失う。それどころか陰でよくない噂を立てられると、いつの間にか学校の中で孤立するようになってしまうのだった。