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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第8章  あやか 


 まるで、そんなタイミングを見計らっていたようだった。


【今度ウチのモデルがティーン向けファッション誌の撮影に参加する】
【よかったら見学にこない?】


 そのメッセージがきたのは、事務所を訪ねてから一か月余り経ったころ。口では上手いこと言いながら連絡をしてこないことに対し、少しだけ不満を感じていたころでもある。

 まるでそんな心理まで、見透かされていたようだ。正直いって、わたしはメッセージがきたことに心が躍った。

 クラスで孤立しているという状況が、図らずもわたしの背中を後押しする。嫉妬からはじまったことなら、とことん嫉妬させてしまえばいい。

 わたしの心にも、歪みが生じていた。

 何度か撮影の現場に連れていってもらうと、みるみる価値観が変わってゆく。どちらかといったら堅実であると思っていた自分が、いつしか煌びやかな世界への憧れを抱きはじめていたのだ。

 学校にもメイクをしていくようになり、スカートの丈も随分と短くした。撮影の時にみたモデルさんを模して、ニーハイソックスやカーディガンなどで個性を際立たせるようになった。

 そうして外見を整えると、男子たちの目が次第に自分に向かってくるのが、よくわかった。それに反比例して、女子たちの敵意が一層に険しくもなった。

 でもクラスでも男子たちと頻繁に話すようになると、表向きでは自分へのバッシングをかわすことができたのだ。

 そのようにして邪とも思える自尊心を培うと、わたしのモデルへの憧れはもう止めることができなかった。

 そうなれば、一番の障壁はやはり両親だった。

「うーん、最終的には俺が説得することになるけど、ある程度はキミの方から話してみてくれないか。段階を踏んだ方が、ご両親の気持ちも柔軟にできると思うんだ」

 加賀見さんに言われ、わたしは仕事のことを両親に話すことになった。

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