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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第8章 あやか
当時、両親は自分たちのことで手一杯という感じだった。というのも、父親が脱サラして、自分たちで事業を起こそうとしていたのだ。
その内容はペットの複合施設というもの。ペットの販売するショップだけではなく、トリミングを行うサロンや、ペットが宿泊するホテルなどを併設したものになるという。
元々、両親は共に大手ペットショップの社員であり、二人はそこで知り合って結婚している。父は主に営業をしていて、母は先に辞めていたがトリミングの資格を持っていた。
二人が無類の犬猫好きなのはわかっていたけど、まさか本当に独立するだなんて思いもよらなかった。家から車で数十分のターミナル駅の傍に、既に物件も借りその改修工事にも取り掛かっていた。
わたしも一度だけ見に行ったことがあるけど、もう少し慎ましくやればいいのに、と思うくらい大掛かりなものだった。
祖父母から譲り受けた実家を担保にして、両親がいくら借金しているのかは、子供であるわたしのしるところではなかった。
「モデル?」
最初に母は言い。
「この大変な時に、バカなことをいわないで頂戴」
まるで相手にする様子はなかった。父に至っては、話を完全に聞き流している。