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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第8章 あやか
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◇ ◇
件の映画の地方ロケは、八月の頭に行こなわれた。
舞台となる国内有数の避暑地には、FP7の浜谷陸也をはじめとした出演者たち、監督を筆頭とする撮影クルーが一堂に集い、連日熱気のこもった撮影が行われていた。
ほぼど素人のわたしが、その光景に圧倒されたのは言うまでもなく。与えられた僅かなセリフを噛むと、監督の「カット!」という怒号が響き渡った。
「す、すみません」
撮影に至る前に、一応は演技のレッスンを受けたことがある。レッスンとはいっても、講師は加賀見さんであり、その時点で期待できるものではなかったが。
唯一憶えているのが「緊張や動揺を隠す時は、逆に無理にでも笑ってしまえばいいんだ」というもの。だけど「笑う芝居じゃない時は?」と聞き返すと、加賀見さんは臆面もなく「さあ?」とおどけていた。
当然だけど、一切役に立つことはなかった。
「大丈夫だよ。気楽にやろう」
そう言って励ましてくれたのが、主役の浜谷陸也さん。わたしがNGを出す度に、自身はその前の長いセリフを繰り返さなければならないのに、嫌な顔ひとつすることはなかった。
テレビのバラエティー番組においても、グループいちの明るいキャラとして定着している。そのままの気さくさを感じて、わたしは感動を覚えた。
悪戦苦闘しながら、なんとか全出演シーンを取り終える。ロケの終了時間が遅かったこともあり、夜はホテルに泊まり次の日の朝に帰る予定だった。
わたしを含め何人かが最終日ということもあり、仲良くなった若手俳優を中心に打ち上げをしてくれる運びになった。スタッフやマネージャーも多数参加したことから、ホテルの近くのレストランはほぼ貸し切り状態になった。
そうして二時間ほど飲み食いして、そろそろお開きにしようというころ。
「なになに、もう終わっちゃうの?」
突然に顔を出した浜谷さんの登場に、一同が驚いた。
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