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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第8章  あやか 


「え?」

「そういう内容だからこそ、契約金を上乗せしたんだからね」

 加賀見さんは言いながら、自分のデスクの引き出しを開き、取り出した契約書をわたしの前に置いた。

 主だった項目の裏には、とても小さな文字で様々な取り決め事項が詳細に記されている。わたしはそれを口にして読んだが、頭には入ってこなかった。

 代わりに加賀見さんが言う。

「要約すれば、こういうことだ。タレント側――すなわち、あやかの落ち度によって事務所に損失をもたらした場合、他に方法がない限りAⅤ出演をすることで損失の補填をすることとする、と」

「わたしの……落ち度?」

 言いながら、契約書を手にした両手が怒りに震えた。

「まあ、厳しいことを言うようだけど。俺の方針として、基本的にタレントのプライベートには口出しするつもりはない。だがそれだけに、タレント側にも自覚をしてもらわないとね」

 惚けた口調の加賀見さんに、わたしは激高した。

「浜谷にわたしを売ったのは――あなたでしょう!」

「待ってくれ、人聞きが悪いな。俺は電話があれば迎えに行くつもりで、一晩中待ってたんだぜ。そしたら、まさかの朝帰りだ」

「気が進まなかったわたしを、行くように仕向けたくせにして……全部わかってたんでしょう? 本当のことを言ってください」

 努めて気を静めながら加賀見さんを見つめる。すると、ため息を吐いてから、加賀見さんは言った。

「俺だって、これからって時のあやかを傷物になんてしたくなかった。でも、仕方ないだろ。相手が悪いよ」

「なに……それ?」

「こんな記事がでなければ、あやかを引き上げてもらうチャンスにもできた。それだけに、運がなかったな」

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