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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第8章 あやか
「……」
最早、絶句するしかなかった。
これだけの目にあわされたことを、加賀見さんは「運がない」という一言で終わらせようとしているのだ。そして、この先もわたしに同様の想いを強いようとしている。
「汚い……」
「ん? なんて言った?」
「汚いって言ったんです。卑怯で下劣で、最低の人間ですね……」
「ハハハ、違いない。だがな自分だけが清廉でいたつもりなら、それは大間違いだが」
「どういう意味、ですか?」
「不思議だと思わなかったかい? どうして名もない新人の自分に、急にグラビアの仕事が決まったのかって」
「……!」
確かに、そう感じることはあった。
なんとも嫌な笑みを浮かべ、加賀見さんはそれを告げている。
「ゆうかの、おかげさ」
「ゆうかさん、の……?」
「ゆうかが、いろんな男たちに抱かれてくれたおかげで、あやかの仕事が決まったんだよ」
それを聞いた瞬間、視界がぐにゃりと歪んだような錯覚を受けた。この前、事務所で会った時の、ゆうかさんの冷たい態度が、何度も思い返されていた。
「いいか。あやかは、他人の犠牲の上でチャンスを得て売れたんだ。そのくせして、自分だけ綺麗でいるなんて虫がいいとは思わないか?」
そんなの戯言。そうと思いながらも、反論するだけの力が、わたしには残されていなかった。