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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第9章   僕  


 僕は怖気づいてしまった。岬ちゃんの過去と、それを淡々と語った彼女に。

 しりたかったんじゃないのか、それを。自ら望んでいながら、その闇が開いたような心に、なす術を持たない。

 だから僕はこんな自分を脱して、変わりたかった。

「岬!」

 その名を口に出し、この声を変える。

「資格がないなんて、決めつけるな!」

「!」

 続き強い言葉を浴びせると、彼女の表情も俄かに変わった。

「どうして自分のことばかり、そんなにも卑下するんだ! 生きる資格がないのは、キミのことを傷つけた奴らの方じゃないのか!」

「それでも、世間はそのように回っています。わたしは弱いから、それに抗うことはできません。そして、自らの罪を消すことはできない。だって、わたしが岬を――」

「岬は、ここにいる!」

 僕は堪らずに、その痩せた肩を強く掴んだ。

「え……?」

「自分で僕にそう言ってただろ。キミは岬なんだ。だったら、罪なんてないし、なんの資格も失っていない」

 そう迫ると、ようやく感情を露わに。

「だって……そんなこと言われたって……」

「じゃあ、僕が証明する」

 唇をぶつけるように、キスをした。

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