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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第9章 僕
「ハ、ハハ……俺だって、今更、どうでもいいんだよ。あれ以来、業界から干されちまってなあ。こんな郊外まできて、やってることといったらコンパニオンの斡旋事業さ。なあ、あやか! 結局は、俺もお前と同じ被害者だと思わないか?」
「黙れ!」
僕は言って、ナイフを加賀見の涙袋の下に押しつけた。頬に一筋の血が流れる。
だけど、そうしたことで、逆に加賀見を開き直らせてしまったようだ。
「そうだ! やれよ! その代わり、今度はお前が加害者だ!」
「くそっ、ふざけるな! 自分のしたことを思い出せ! そして、それを悔いろ!」
「やだね」
「彼女に、謝れ!」
「ハハ、じゃあ――」
加賀見は再び、くっと口角を釣り上げた。
「どうも、ごめんなさーい、っと」
そのふざけた言葉に、かっと我を忘れた。
もしその声が一瞬でも遅れたら、僕は取り返しのつかないことをするところだった。
「均くん、もうやめてください」
岬ちゃんは僕の傍らに立つと、ナイフを握った手をゆっくりと下ろさせた。
そして、ソファーに倒れ込んでいる加賀見に対して、深く頭を下げる。
「ごめんなさい」
その光景を、僕は信じられない想いで見つめた。
「み、岬ちゃん……?」