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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第9章 僕
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岬ちゃんの話にある程度納得しながらも、自分としてはバツが悪い気がして頭を掻いた。
「でも、そうなると……」
「均くん?」
「いや、僕はなんの役にも立たてなかったなって……それどころかナイフなんか持ち出して、もう少しですべてを台無しにするところだった」
岬ちゃんが、僕の手を握る。
「均くんが傍にいてくれなかったら、一人じゃなにもできませんでした」
「岬ちゃん……」
「均くんが必死に立ち向かってくれたから、私は勇気を持つことができたんですよ」
今度は完全に、晴れやかな気分になった。
「僕も少しだけ、わかった気がする」
「なんですか?」
「なにかに手をこまねいた時、声を変えて態度を変えて、自分ではできないことをできるんじゃないかと思っていた。でも、それではなんの意味もなかった。迷って躓いても自分自身で答えを探して、なけなしの勇気を振り絞って行動する。そんなことを、今日の岬ちゃんから教えられたんだ」
「均くん」
見つめ合い、互いに吸い寄せられるように唇を重ねた。そして、唇を離すと、ふっと笑みを浮かべて言った。
「ハハ、いつの間にか、また岬ちゃんって呼んでた。夢中だったから、つい」
「もう、かまいません」
「でも、その名前で呼ばれるの辛くない?」
「今となっては、よくわからないです。だけど……なんとなく、だけど」
「……?」
「均くんには、岬として――抱きしめてほしい。そういう気持ちが、今はあります」
「み、岬ちゃん」
改めてその名を口にして、肩を抱き寄せた。
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