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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第9章   僕  


 ぐっと、それを押した刹那。岬は瞳を閉ざし、はっと息を呑んだ。それを受け、それまで迎えようとしていた身体が、一気に強張っている。

「大丈夫?」

「へ、平気……このままひと思いに」

「だけど……」

「いいの……さあ、貫いて!」

 ごくりと喉を鳴らし、僕は意を決して、強く腰を落とそうとした。

「!」

 しかし、僕の腕を強く掴み、顔を歪めた姿をみて、僕はそっと力を抜いた。

 そして――

「岬」

「……?」

「僕の顔をみて」

「……」

 言葉に従い、岬はゆっくりと大きく瞳を開いた。うるうると揺れてる、その奥の漆黒。その中に漂う、彼女の意識を見つめる。

「一緒にいるよ、ずっと」

「ああ」

 微かに発した岬の瞳から、大きな雫の涙が零れていった。

「愛してる」

「うん、わたしも」

 既に、意志は関係なかった。まるで見えない力に、導かれるように。

「岬のために、僕は強くなる」

「嬉しいよ――均」

 僕と岬は、ひとつになった。

 愛おしい想いが強いから、相手を引き合う。そこに満たされた体液も、巡って形を成した血潮も、心が呼び合えばこそ、強く結び合うのだ。

 たとえ快楽と興奮に誘われ繋がったとしても、今のこの感覚は決して得られないものだと、僕は確信している。

「岬――岬!」

「ああ、均!」

「僕は、岬と――」

「わたしも、均と――」

 ――一緒に、生きる。

「うっ、ああ!」

「はあぁぁ――!」

 僕たちは、激しく果てた。

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