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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第9章   僕  


『ああ、それだと、ただの媚薬かな。飲んだのは、たぶん睡眠導入剤じゃない? リラックスできるように』

『とにかく私……あの夜の快感が、忘れられないんです』

 女のその言葉を受けて、男が笑う。

『フフフ、あやかちゃんは見た目と違って、とてもエッチな子みたいだ』

『ごめんなさい。とても恥ずかしいです……』

『うおっ、なんかぞくっとした。いいぞぉ、今夜はもっともっと感じさせてあげよう』

『もっと?』

『ああ、もちろん。すっごーく、気持ちよくなれる薬を持ってるんだ。前のとは比べ物にならないよ』

『【H】さん……』

『じゃあ、早速ベッドへ――』

 男が言いかけた時、ドンドンドンとなにかを叩く音が響いた。

 それに続くように――。

『中にいるのはわかっている! ドアを開けろ!』

 そのような声が微かではあるけど、しっかりと録音されていた。

 会話音声の再生を終え、再び画面の中の弘前あやか自身が話しはじめた。

『この音声を聴いて、皆さんがどう感じるかはわかりません。私は明らかに嘘を言って近づき、そして嘘を交えて、これらの会話を【H】さんから意図的に引き出しました。このやり方に対する、ご批判も覚悟しています。ですが、私、弘前あやかが【H】さんから、薬を使用された上で暴行を受けたのは、純然たる事実なのです。それを繰り返して、この度の告発を終わりにさせていただきます。ご視聴ありがとうございました』

 弘前あやかは言って、深く頭を下げた。動画はそこで終わっている。

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