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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第9章 僕
そして動画投稿から数か月経った現在は、大きく状況は変わっている。僕はテレビをつけると午後のワイドショーにチャンネルを合わせた。
番組内では、数人のコメンテーターが議論を交わす。弘前あやかと浜谷についてだった。
「私は、どうかと思いますね。弘前さんのやり方を認めてしまえば、今後もこのような案件は増えるでしょう。暴行を受けたのであれば、もちろん同情は禁じ得ません。が、やはり一度、泣き寝入りしてしまった以上、後になって……しかも訴えた手段が動画投稿サイトでは、身勝手な印象は拭えませんよ」
四十代の男性のコメンテーターの意見だ。それに対し——
「ですが、法廷に訴えたとしても、果たして有罪に持ち込めた案件でしょうか。状況はどうあれ彼女は自ら相手の泊まるホテルの部屋を訪れ、睡眠薬等を使用されたというのも彼女の主観にすぎません。当時、被害届を出したとしても、起訴されたのかさえ微妙だと言わざるを得ません」
三十代の女性弁護士が言う。
「貴女は仮にも法律家でしょう? そんな人間が、正々堂々と法に訴えることをせずに、動画を投稿することを推奨するおつもりですか!」
「そんなことは言っておりません! そちらこそ、性被害者が受ける様々な苦しみに対して、ご理解がなさすぎると思います。それに、彼女自身は顔も名前も隠さずに、動画を投稿しているのですよ。その勇気は、決して軽んじられるべきものではありません!」
「会話を録音したのは、だまし討ちですよ」
「そうでもしなければ、事実は闇に葬られていたんです」