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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第9章   僕  


 コンビニを後にして向かったのは、近くのファミレス。もう一人、会う約束をしている人がいた。

「均!」

 店の奥のボックス席で手を振った彼女に、僕は応えた。

「美里さん!」

 向かい合って座り、飲み物を頼むと、先に美里さんから聞かれた。

「彼女は元気?」

 美里さんは、屈託のない笑顔を浮かべる。

「相変わらず元気とまではいきませんが、随分と前向きになりました」

「ワイドショーや雑誌の取材とか、大変なんでしょ? この辺でも、まだ見かけることあるもの」

「それでも一時期よりは、随分と落ち着きましたね。後は引っ越す時に気をつけようかと、それでこんな時間に。ハハ、まるで夜逃げみたいだな」

「この後、もう行っちゃうんだね」

「はい」

 視線を合わせてから、今度は僕から訊ねた。

「岸井さんは、どうですか?」

「うん、手術は無事に成功したよ。幸いリンパ節への転移もなかったし、今は大学にも普通に行ってるみたい。もちろんこの先も、治療と検査は続くんだけどね」

「そうですか。でも、よかった」

 少し間を置いてから、美里さんがぽつりと言う。

「私ね、希とはつき合ってないから」

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