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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第9章 僕
「え?」
「ううん、正直にいうとね。手術が終わって退院してから、一度だけ身体を重ねたことはあった。だけど、それは……うーん、説明するのは難しいな」
「なんとなくだけど、わかる気がします」
きっと美里さんは、岸井さんにエールを送ったのだと思う。
「とにかくね。今は友人として、希を支えているんだ。希が私の支えを必要としなくなるまではね」
そう言った美里さんの表情は、とても魅力的に映った。
「僕……短い間だったけど、美里さんとつき合えて、本当によかったと思ってるんです」
「均……」
「おかげで、ほんの少しかもしれないけど、成長ができた。それがなかったら、きっと……」
岬とのいろいろなことも、少しずつ違っていたのかもしれない。
「ああん、もう……」
「美里さん?」
「先にそういうこと言わないでよ。私って結構、この手の雰囲気に弱いんだからぁ……」
美里さんは言いながら、手で涙を拭っている。
その姿を見ながら、僕はぽつりと呟いた。
「優しくて、包容力がある人だから」
「え?」
「いえ……」
思わず言いそうだった言葉を呑み込み、僕は最後に美里さんに告げる。
「ありがとうございました。さようなら」
「うん……元気でね」
美里さんは、僕の大好きな笑顔を向けた。