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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第1章  山本均 


「え……?」

 僕の向けた間抜けな視線に、岬ちゃんが改めて口を開いた。

「メッセージにあった【エッチなこと】の意味合いよっては、がんばれることもあるかもしれませんので……自分なりに」

「が、がんばるって……? だけど、さっき――」

「ですからっ、オーソドックスというか、セック、すすす? ――といいますか、あわわ――つ、つまりですね。本来の意味での通常のエッチは、できませんがぁっ!」

「はいっ!」

 照れ隠しの逆噴射的な彼女の勢いに、反射的に元気な返事をしてしまった。今度はそれに岬ちゃんが驚き、前のめりの姿勢を正して息をついた。

「けれど、均くんからのメッセージは【エッチなこと】だったので。その範囲内でなら、わたしにもできることがあるのではないかと、そう思いました」

 で、できること……?

 頭の中が、ぽっかりと空洞化してゆくのが自分でもよくわかった。はっきり言って、理解不能すぎ。それでも頼りない頭で、ここまでの展開をかみ砕こうと努めた。

 岬ちゃんは、あのメッセージを僕が送ったものと勘違いしてる。それに怒るどころか、いきなり僕を自分の部屋に連れてきていた。

 その上で〝エッチ〟はできないけど〝エッチなこと〟ならオッケーと、そう言ってるのか、ホントに……?

 なに、この展開。もしかしてからかわれてるんじゃ……。

 エアコンの送風が室内を温め始める中、僕は逆に凍りついたように、その場で固まっていた。目に前の岬ちゃんは、ものすごく恥ずかしそうにしながら、たまにちらちらと僕を窺っている。

 その顔を湯気がでそうなくらいに、上気させながら。

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