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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第1章 山本均

だけどそれは、さっきまでのような性的な興奮とは違う。
受験に失敗してあてもなく深夜のコンビニでバイトをしていること。兄や弟より圧倒的に劣っていること。そんな鬱屈が、一気に吹っ飛んだ気がした。
今の、彼女の言葉さえあれば、僕はどれだけの勇気に溢れることができるだろう。岬ちゃんの言葉が、この人生に光を差してくれた。世界の中の誰かひとりでも、そう言ってくれることの喜びをひしひしと感じている。
なのに、僕は既に間違えはじめていた。ボタンをかけ違い、初めは些細な行き違いでも、後になればなるほど、どうしようもなくなることに気づけないでいる。
愛おしくて、思わず抱きしめてしまいたくなっても、本来の僕のままではそれができずにいる。もっと普通に、ゆっくりと心の距離を縮めることができていたのなら、それは違ったのかもしれないのに……。
でも僕は自分を飾る(偽る)ことで、岬ちゃんを淫らにする喜びを味わってしまった。
「じゃあ、僕になら――なんでも好きなように、させてくれるんだね」
胸を熱くした彼女の言葉を逆手に取り、そんな風に言ったことに自らが驚く。最低だと感じても、もう他のやり方なんて見失っていた。

