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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第3章 たもつ
◆ ◆
バイトを終えてから岬ちゃんの部屋に行き、その帰り道。部屋を出て表を歩くと、もう日がかなり高いことを思いしった。駅前の商店街では、多くの店がシャッターを開いている。
そんな中を歩きながら、部屋での岬ちゃんとの行為を自然と思い返した。
ほんの少しの高揚感は、キスをしたことで得たもの。その他の淫らな行為については、今はどう判断していいのか、考えはじめると悩ましくてモヤモヤする。
突然、別の場面のことを思い出した。
「ねえ、二人って恋人同士なの?」
「違います!」
大学生の美里さんの質問に対し、岬ちゃんは即座にそれを強く否定した。僕の中でその事実が、わだかまりとなっていた。
もちろん僕だって「そうです」なんて言えたはずがない。あの時点で僕らの間にあったものは、メッセージの誤解に端を発する【エッチなこと】だけだから。
それでも、はじめて岬ちゃんの素顔を見た時のときめきであり、同じくらいの年頃の女の子とメッセージを交わす楽しさであるとか。そんな気持ちがあった分、やはり岬ちゃんの言葉はショックだった。
彼女との出会いを特別なものだと、少なくとも僕は思っていたから……。
暫く素っ気ないメッセージを送ったり、例の〝目隠しプレー〟に至ったのだって、そんな気持ちの裏腹だ。どうせ【エッチなこと】をするだけの関係なんだ、と子供みたいに不貞腐れていた。
だけど、岬ちゃんは淫らに乱れていた時でさえ、こちらが切なくなるくらいいじらしく。やっぱり僕は、彼女を傷つけるような真似はできないと感じた。
いや、彼女がどうして傷ついているのか、それをしりたいと思っている。今はとにかく、岬ちゃんのことを……。