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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第7章 婦人の悩みと殿方の困惑
「……むぅ……」
家令は嫌そうに碗を見て、胡散臭そうにジャナを見て、また碗の中の薬湯を見て顔をしかめました。
「毒では無いのだな?」
「御館様が証人です」
「む……」
家令はげんなりした顔でジャナから碗を受け取りました。そのまましばらく薬湯をしげしげと眺めておりましたが、口をつけて中身を一気にあおりました。
「あ」
「っ……!?」
少しずつは飲めないと考えてそうしたのでしょう。しかし、結果として家令は飲み込めない薬湯を口いっぱいに溜めたまま、両手で口元を固く押さえて部屋から走り去る事になりました。
「様子を見て参ります」
「待て」
予測以上の結果を目にしたジャナは、喜びに飛び跳ねそうになりながら家令を追おうとしましたが、御館様に止められました。
「どうして、あんな風に……? 私とはずいぶん反応が違う」
御館様はじろりとジャナを睨みました。
「よもや、違うものを飲ませたのでは有るまいな」
「滅相も御座いません」
家令を追うことを諦めたジャナは、残された碗を手に取りました。
「この薬湯は、男と女で反応が異なるのです」
「何?」
「効き目もですが、体の反応も、味の感じ方も違います」
惜しかった、とジャナは内心嘆息しました。
おそらく家令はあれを飲み込めなかったでしょうが、どんな反応をしたのかは、今後の為に知りたかったのです。
(単に吐き出したのか……吐き気はどの位続いたのか……吐き出したあとどんな風になったのか……それに、どのくらい長く口の中に違和感が残ったのかも……後味を消すのにどんな飲み物を欲したかも参考になりそうだったのに)
残念ですが、雇い主の機嫌を損なわない事の方が大事です。
「……それに、感じる味や飲みやすさは、同じ女でも一人一人違います」
ジャナは、薬湯の説明を続けました。