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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第2章 その弟子、現る
それを認めた少年は、にっと笑って体を跳ね上げ、倒れるであろうウバシに向かって蹴りを繰り出した……のですが。
「……お生憎様♪」
「えっ!?」
体をバネにして反動を使う蹴りは、他の動きの可能性や余裕を犠牲にして掛ける大技です。少年がそれを使って来たのも、ウバシの戦闘能力が削がれていると思っての事でしょう。
しかし、それは少年の誤算でした。ウバシに対する少年の技は、考えた程の効果は無かったのです。
予測を呆気なくひっくり返された少年は、更に予想外の目に遭いました。
ウバシは蹴りを防ぐのでは無く、蹴りに入った少年の動く方向を小さくずらして、更に速度を加えたのです。
「……あ!!」
それは今まで手合わせをしたどの男とも違う、少年が使っているのに近い技でした。
結果としてふわっと空中で回転させられて、地面に落下する前に、足の甲で衝撃を殺され上手く着地させられたのです。
「くっ……!」
「ごめんあそばせぇ、悪いわねーえ?」
痛い目に遭わされなかった事に安堵するでもなく、少年は悔しさに唇を噛みました。
自分の特性に合わせて編み出した技を、今まで散々翻弄してきた相手と同じ様な体格の男に、易々とやり返されたのです。しかも、それは自分がやっているよりも、数段洗練された技でした。
少年は自分の驕りと力不足に、ぐうの音も出せず歯噛みしました。
「……悔しい?でも、頭が負ける訳にはい・か・な・い・のよねーっ」
「っ!!」
少年はひょいとつまみ上げられ、肩に担がれました。
「アンタ、ちょっとおいで」
「え……何をっ、」
少年がはっとして暴れ出すのを少しも気に留めず、ウバシは審査官達に呼び掛けました。
「中休みは、これまでとする!邪魔して悪かった、続けてくれ」
「師範?!」
「彼の審査は、どうするのですか?!」
「こいつは、俺が預かる」
慌てる審査官達から暴れる少年へと視線を移し、ウバシはにやりと笑いました。
「結果は、追って連絡する。……こいつは今から、特別面接だ」