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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第2章 その弟子、現る
(……この子……)
「私で、宜しければ……お手合わせをお願いしとう御座います」
突然現れた厳つい大男の、それも明らかに実力に雲泥の差が有るだろう師範に、突然手合わせを申し出られたのです。
怯んだり脅えたりしても、仕方の無い状況でしょう。それなのに。
(いゃーあんっ!!面白いわぁ、この子ぉっ……!!)
恐れるでも無く腰が引けるでも無く、高揚した期待を微かに滲ませた少年の物言いに、ウバシの血が沸きました。
「よし、合意成立ね。遠慮しないで掛かっておいで!」
「……ご無礼、ご容赦」
少年が頭を下げ終えた瞬間に、向かい合った二人の間に、ひゅっと鋭い風が吹きました。
(速い!……けど)
目にも止まらぬ速さと言っても良いような突然の打撃をウバシに見もしないでいなされて、少年はピクリと眉を動かしました。
(……猿に比べたら、甘いわよっ!!)
ウバシは少年を無意識にビスカスと重ね合わせておりました。今は戦闘から離れているビスカスの修行の終盤、全盛期の頃と比べると、少年の動きは明らかに速さも切れも段違いに劣る物でした。
「……っ!!」
何度か攻撃をかわした後、ウバシは少年の攻撃を正面から止めて、一発だけ手刀で肘と手首の間を打ってたたらを踏ませ、手の甲を返して背中を払い、地面に膝を付かせました。
「残念、まだまだね……っ?!」
油断させる策だったのか、偶然起こった状況を利用したのか。
少年は気を緩めて近付いたウバシに向かって振り向きざまに、纏めた指先で胸の辺りをとん、と素早く突きました。
……その途端。
ウバシの呼吸は、強制的に止められました。