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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第3章 少年の秘密
「はい。果物の蜂蜜漬けの、お湯割り。」
入門希望者を審査会場から連れ去る、という前代未聞の暴挙の後、ウバシは自室のテーブルに着いて、少年と向かい合っておりました。
「…………」
「嫌いじゃなかったら、飲んで。疲れたでしょうし、喉乾いたでしょ?突然手合わせさせたお詫び」
「………」
「遠慮しないで。毒じゃ無いわよ?」
そう言うとウバシは少年の前のカップを取って豪快に飲み干しました。そして入っていた果物をもぐもぐと咀嚼しながら、自分の前に有ったカップを少年の前に置き直しました。
「……いただきます……」
「どうぞー」
少年はぼそっと挨拶すると、中身を覗き込んでまともに湯気を浴び、口元をへの字に顰めてカップに口を付けました。
「…………美味しい……!!」
「そう!口に合って、良かった!!」
ウバシは見ようによっては満開の花のようだと言えない事もない満面の笑みを浮かべて、湯沸かしを手に取りました。
「それ、実は、私のとっときなの。お湯差したらもう一煎くらい飲めるわよ」
ウバシは飲み終えた少年のカップに、お湯を注いでやりました。
少年は立ち上る湯気と妙に家庭的な大男を交互に見る様に首を忙しく動かしながら、先程から考えていた疑問を口に致しました。