この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第1章 闘人館の十五代
昔、あるところに、闘人の属する館が有りました。
闘人というのは、公に属していない私兵の事です。
そこから公的な職に就く者も居りましたし、公的な機関等から修行に来る者もおりました。それなら何故公の機関にしておかないのかとお思いの方も、いらっしゃるでしょう。
世の中には、公に属さないからこそ出来る仕事や、修行というものが有るのです。大きな声では言えない様な仕事は、それだけ多くの危険と報酬を伴います。その様な需要は、いつの世も常に存在しております。それによって動く富というものは、なかなか馬鹿に出来るものではありません。
ということで、そこは知る人ぞ知る場所として、密かに永く続いておりました。
女人禁制、一度入ったら過酷な行をやり遂げて認められねば出られないという、厳格な場所です。
正面から出るか、さもなくば、入門したとたんに逃げ帰るか、限界を知って逃げ帰るか、あらゆる面での禁欲的な生活に耐えられなくて逃げ出すか。
とにかく、そこを出るにはやり遂げるか逃げるかの、いずれかの選択肢しか有りません。
しかも、やり遂げられる人間は、ほんの一握りどころか、壷一杯に入った豆のうち、一粒も有れば良い程でした。
近隣の村では、無一文で逃げ出した者に代金を高利で貸し付けて世話をする、宿や飯屋や服屋などの、商売が成り立っていた程です。
それだけに、そこでの修行を終えた者達は選りすぐりの優秀な人材として、富や権力の中枢に在る者の間では、重用されておりました。