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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第4章 天女とじゃじゃ馬
「ご無沙汰致しておりやす、兄さん」
ジャナの入門騒ぎからしばらく経ち、なんとか馴染んで落ち着いて来た、ある日のこと。
闘人館に、一組のお客が参りました。
門弟に案内されて師範の部屋に現れたのは、小柄な男とすらりとした佳人でした。男は猿を思わせる愛嬌の有る顔付きでしたが、女の方は帽子とベールで隠れていて、顔がはっきり見えません。
女人禁制の闘人館を訪れる女は、顔を隠さねばならないという掟が有ったのです。しかし、この女は醸し出す雰囲気や一挙手一投足が隠しようも無いほど優美で有ったので、顔を隠していることで却って門人の興味を引くという、逆効果を生んでしまっておりました。
「まあまあまあ!いらっしゃいませ、ローゼルお嬢様!!……と、ようこそビスカス。」
ウバシの歓迎を受けた女は、会釈して帽子と上着を脱ぎました。傍らの男がそれを受け取り、女はウバシに向かって品良くお辞儀を致しました。
「初めてお目もじ致します、ウバシ師範様。お目にかかれて、大変光栄に存じますわ」
「……まぁっ!!」
女性が、伏せていた顔を上げると。
暗かった室内が、急に明るくなった様に思われました。