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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第4章 天女とじゃじゃ馬
弟弟子が連れて来たのは、大変な美女でした。
絵描きや彫刻家に理想の美女を表現させたとしても、ここまで美しくはならないでしょう。
しかも、絵や彫刻と違って、動いて話して微笑むのです。その姿も声も口調も雰囲気も、どれもが完璧に美しく、まるで生きている宝石の様でした。
弟弟子の挨拶をほっぽらかしてその美女にいそいそと挨拶したウバシは、掌を頬に当て、うっとりとその姿に見惚れました。
「さすが音に聞こえた『水晶の薔薇』ねえ!……動いてなくても美術品みたいに綺麗だし、何をなさっても、踊ってらっしゃるみたいに優雅な動きなのねえ……まさに生ける芸術よねえ。飾っておきたーい……帰したくなぁーい……」
「うげっ」
「まあっ」
嫌そうに呻いた弟弟子には目もくれず床に片膝を付き、頭を垂れて正式な貴婦人への礼を致しました。
それから、目を丸くしている美女の手を取って、恭しく押し頂きました。
「……ローゼルお嬢様。お会い出来る日を、一日千秋の思いで待ち焦がれて居りました」
ウバシが女性に振れた瞬間、それまで呻き声しか出せずに唖然として目の前の光景を眺めていた男が、慌てました。