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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第4章 天女とじゃじゃ馬
*
「遊んでくれて、ありがとね」
「やー、すっげえやりにくかったですよー……」
しばしの後。
勝ちを収めたビスカスを、ウバシが労いました。
「やっぱ、体格が似てると、やる事も似ますねー。鏡と闘ってるみてぇでした」
「でも、まだまだアンタに相応しい相手になるには程遠いでしょ?」
「そりゃねー……年季が違いやすし……」
ジャナの傍にいる奥方にちらっと目をやって、ビスカスはぼそりと付け加えました。
「……ローゼルの御前で俺が負けんなぁ、ローゼル自身が相手の時だけですよ」
遊びであっても稽古を付けてやるのであっても、主でもある奥方の前で負ける訳には参りません。
「は。アタシにですら負けないって?」
「勿論」
「さすが、お嬢様命ねー」
「当然です」
「しっかし……ぶつかっちゃダメな壁だけど蹴るのは良いって、小狡かったわねー」
勝敗の決め手になったのは、ビスカスが壁に向かって跳んで、そこを蹴って反転してジャナを蹴りに行った技でした。呆気に取られたジャナは床に転がって、ビスカスに押さえ込まれたのです。
「別に、狡か無ぇですよ?狭いとこでのやり方を、ちっと教えてやったんですよー?……ほら」
ジャナはビスカスに仕掛けられた技を、何度も繰り返し練習しておりました。壁を蹴る角度や蹴りから反転するのが難しいらしく、時々首を傾げて居ます。
「ジャナは、素直だからねえ。アンタみたいな小狡い策は、自分じゃ思い付かないのかもね」
「なるほどねー……でも」
「んー?」
「いざって時ぁ小狡く立ち回れる方が、良いですぜ?変人だって療術馬鹿だって、女の子ですからねー。相手を騙くらかして隙を付いて、股ぁ蹴り上げるくれぇの事は教えといてやらねーと」
「……そうねえ……」
確かにビスカスの言う通り、女の子に必要なのは金的の痛みを知りたがる事ではなく、金的を確実に蹴り上げられる様にしておく事の方でしょう。
ウバシは奥方に励まされながら練習を繰り返すジャナを見て、大きな溜め息を吐きました。