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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第2章 その弟子、現る
ウバシの弟弟子になったその猿の様な小男は、最初のうちは先代含めた全ての門人から、すぐに逃げ出すと思われておりました。
ところが。
その猿……ではなくて小男は、恐ろしい身体能力と要領の良さを発揮した上、自分の小ささを逆手に取って、今まで大きい男たちの間で見過ごされていた隙間を縫うかの様に、館での修行を一つずつ地道にこなして行きました。
小男は得体の知れない打たれ強さを見せ、兄弟子や同期や弟弟子を口車に乗せてはほいほいと味方に付け、体格の良い者には出来ない闘い方や活動を見つけては実践するという事を繰り返し、やがて飄々と修行を終えて、主の元に帰って行ったのです。
先代はその男を特例と考えた様ですが、ウバシの考えた事は、少し違いました。
体格が良く力が有り筋骨隆々とした人間以外でも、特性を生かす事でより目的に合った闘人を育てる事が出来るのではないか、と思ったのです。
例えば、その猿……ではなく弟弟子の様に小柄な事を逆に生かすなり、何らかの特殊な知識を生かすなり、体質を生かすなり、といった風にです。
ウバシは先代から後継の話を持ち掛けられて以来、新しい取り組みの一つとして、入門者の選別の方針を少しずつ転換して行きました。
しかし、長年屈強な男の集まる場として知れ渡っている場所です。新しい方針を数年で周知するのは難しく、新しい風をもたらす様な人材は、なかなか集まりませんでした。