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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第2章 その弟子、現る
*
「師範。失礼致します」
「ん?ああ、お前か」
あるの日の事です。
その日は、三月に一度の入門希望者の審査の日でした。
審査はまず、中堅の門人の監督下で行われます。体格等の測定、志望理由や得意な事の聞き取り、そして希望者同士の手合わせも行われることになっておりました。
その審査を担当していた中堅の弟子の一人が、ウバシの元に来たのです。
審査は、まだ終わっては居ない時間でした。
「何用だ?審査で何か不都合な事が有ったのか?」
「いえ。不都合では無いのですが……ちょっと気になる希望者が居りまして」
「気になる?」
「その……かなり小柄で華奢な少年なのですが、他の者達と、どこか違うのです」
「へえ」
生真面目な弟子が難しい顔で報告するのを聞いたウバシは、面白そうに片眉を上げました。
「お前、ビスカスと手合わせして、変わったな。……物を見る視点が、一段高くなった」
「え」
ウバシはここで修行をした中での唯一の例外とも言える、猿似の小男の名を出してからかいました。
ビスカスが以前ここに来たときにこの弟子と手合わせして完敗し、その後仕事を共にしました。
弟子はその体験を通じて、それまでの狭量だった認識を、すっかり改めて居たのです。