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プロポーズ体験売り出します
第7章 目的達成につき販売終了
いつもより30分も早くオフィスに着いた。
昨日の水神さんの体験報告をどう話したらいいのか、
まだ上司が出社していない静かなオフィスの中で頭の中を整理した。
正直に、ありのままを報告すればいいとは思うものの、
商売が成り立たなかった結果は話さなければならない。
次の販売予約開始に向けて手直しすべき最大の点が、今回のような
イレギュラーな出来事だ。
俺はパソコンの文章作成画面に「不測の事態への対応策」と
タイトルを打ち込んでから、しばらく腕組みをして考えていた。
「あら、早いのね」
ドアが開くと同時にまり恵ちゃんの声が響いた。
おはよう、と言いながら俺の前のデスクにバッグを置き、それから
コーヒーの香りに包まれているキッチンへと足を向けた。
「おはようございます。昨日の報告の前に今後の改善策とか
思いついたことをまとめておこうかと思って」
まだタイトルしか打ち込んでいない画面を見られたくなくて、
ノートパソコンをそっと閉じてから立ち上がった。
マグカップ片手に戻ってきたまり恵ちゃんとすれ違うように
今度は俺がキッチンへコーヒーを淹れに行く。
背中で感じ取るまり恵ちゃんの存在感が、俺の心臓を落ち着きなく動かす。
報告を聞いてどう思われるのかどんな言葉を返されるのか、
想像が追い付かないほど緊張している。