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プロポーズ体験売り出します
第7章 目的達成につき販売終了
「これだけ大掛かりなトラップを仕掛けて真実をあぶりだしたんだ。
 不倫の恋のケリをつけるためのものでなきゃあ、許さないっすよ」

語尾が震えた。最近すぐにウルっとくる。
きっとこの仕事で人の心に近づくことを知ったから。それが原因に違いない。

じっと見つめていたまり恵ちゃんのへの字にゆがんでいた唇が、元気よく口角を上げた。

「ええ、不倫の恋を終わらせる、いえ終わらせたわ。
 何もかも自分の思い通りに事を運んでやった・・
 退職も普通なら1カ月前までの申し出だけど、ここの片づけを終えたらすぐに辞めるって
 辞表叩きつけてやったわ」

すっきりとした晴れやかな表情で、まり恵ちゃんは狭いオフィスの中を歩き回る。
彼女のセンスでそろえたソファやテーブルや棚。
そして俺たちを潤わせてくれた食器たち。その一つ一つに別れを告げるかのように
手を添えて、最後に俺の前に立った。

「あと2日くらいかしら、菱沼君と一緒に働けるのは。キミを選んで本当によかった。
 自分で言うのもなんだけど、いい仕事したわ」

「俺も・・楽しかったです。なんか突然のことでわけわかんないっていうのが
 正直なとこですけど・・でも納得できそうです。
 ・・中野さんのものすごさに圧倒されて、そうかわかったよって、
 受け入れるしかないでしょって感じです。すごく・・いい人生勉強しました。
 こんな経験もう二度とできないと思います。
 俺を選んでくれて・・ありがとうございました」

俺の、社会人としての出鼻をくじいた相手に心の底からありがとうって
気持ちを込めて手を差し出した。
その時の、大粒の涙を流したまり恵ちゃんの飛び切りかわいらしい泣き顔を、
きっと一生忘れないだろう。



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