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第4章 一人目のお客様

 予約第一号の芦田弘恵は、50歳と言われなければ
誰もそうは見ないだろうというくらい若々しくてきれいだった。
顔の作りが美人というよりは皺がほとんど目立たなく、ファッションセンスも好い。
若作りではないし、かといってハイクラスなブランド物で固めているわけではない。
好感の持てるシンプルさとでも言ったらいいのだろうか。

さっそくまり恵ちゃんが世間話からのスタートをきって、商談が始まった。
聞き耳をたてながらお茶を入れ、運んでいくと芦田弘恵は
俺を見上げて珍しいものでも見るように目を見開いた。

「いらっしゃいませ」

「お願いします。もしかしたらあなたがお相手になってくれるのかしら?」

俺はニヤッと笑って会釈するだけにした。
あとは上司・まり恵ちゃんに任せるつもりで。

「はい。なんといってもこの事業部には私と彼の二人しかおりませんので」

「そうですか。こんなに若くて素敵な方に担当していただけるなら
 ぜひともお願いしたいですわ」

「恐れ入ります。ではさっそく、芦田様のお話を伺わせていただきたいのですが」

芦田弘恵は大きくうなずいた。
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