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プロポーズ体験売り出します
第4章 一人目のお客様
「まずは・・どうしてプロポーズ体験をしてみようとお考えになったのですか?」

自分のデスクに戻ってそこから見ていた俺は心の中で大声を上げた。
そうだよ、それそれ!ってね。
50歳っていう区切りの年齢ってかなり重いものがありそうな気がする。
若い俺からすると勝手にそう思いたくなる。
中年になって結婚をあきらめて、でもウェディングドレスだけでも着たいとか
プロポーズの真似事でもいいから味わってみたいとか、
そういう単純な理由くらいしか思いつかない。だから興味津々なんだ。

「もう・・彼と結婚するってことをあきらめました。
 この先も多分一緒にいると思うけど、結婚、という関係を結ぶことは
 しなくていい。いえ、正直なところ、彼は結婚して家庭を持つということに
 興味がないんです」

まり恵ちゃんの背中が驚きにピンと伸びたのがわかった。
俺も驚いて椅子を回してきしむ音をたててしまった。
なんだよ、彼氏いるんじゃないか。
独り身の寂しい中年女なんかじゃないんだ。
それなのに売り物のプロポーズに手を出すっていうのか?
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