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プロポーズ体験売り出します
第1章 ハッピーサプライズ
控室のドアがノックされ、いよいよ自分の番が回ってきたなと
ふんぞり返っていた姿勢を正した。
開けられたドアから顔をのぞかせた女性社員は、俺と目を合わせた途端に目じりを下げた。
唇の端も少し、笑っている。
「菱沼航星(ひしぬまこうせい)さん?おまたせしました、どうぞ」
緩い巻き髪を肩の上でわざとらしく揺らしたその女性社員は、
ドアを全開にし俺に部屋を移動するよう促した。
斜め向かいのドアを開けられて、小さく頭を下げながら中に入る。
窓を背にした長テーブルには3人の面接官が座っていた。
ドアを閉め、面接官のほうに向きなおってもすぐに着席してはいけない。
どうぞと勧められてから座るんだと、声がかかるのを待つ。
すぐだと思っていたのに、面接官の誰も声をかけてこない。
何だよいつまで立たせておくんだよと緊張の中でもイラつくことを忘れない俺。
かわいげないのは自覚済みだ。
「ああ、ごめんね、どうぞ座って」
部屋に入って突っ立ってから30秒ほどは経っていただろうか。
やっと真ん中に座っている中年の男性が手で椅子を指した。